気候変動による非超過確率1/10の渇水流量の発生頻度の変化の計算 2024年6月14日 最終更新日時 : 2024年6月14日 西村 宗倫 西村宗倫/国土交通省 国土技術政策総合研究所 河川研究部 水循環研究室 著者氏名/所属 説明資料 R6流量論文(学会説明資料)20240614学会使用版ダウンロード
建設技術研究所の大八木と申します。貴重な発表をして頂き、ありがとうございました。日本全国において治水面だけでなく利水面でも気候変動の影響がでてくることが分かりました。治水計画では計画降雨×1.1といった計画の見直しが進む中、利水計画はどのように見直しをしていくのか、先生の考えがあればお教えください。ダムの利水容量を治水容量へ転用する検討が進んでいますが、本研究成果を踏まえるすと、大変危機感を感じました。気候変動に適応するには、ダム運用といいたソフト対策だけでは限界があり、ダム嵩上げ等の改造が必要なのでしょうか。今後、熱も含めた水環境への研究や、利水・環境(水循環)に対する気候変動適応策を研究して頂ければ幸いです。
先ずは、コメント頂き、深く御礼申し上げます。
今回は、気候変動問題が決して高水だけでなく低水もとから、この論文を書かせて頂いて、お尋ねのところまで思慮は、責任を持てる程度では考えられていないのが正直なお詫びです。
それでは議論が面白くないのでコメントさせて頂きたく思いますが、今後、考えが変わる可能性が多々あることをご容赦ください。
1.一つ目ですが、気候変動で貯まる水が減る中で、ご指摘の嵩上げ等の利水容量を増やす対策は、総論としては、現在よりも投資効率が落ちると思います。
2.施設整備を主眼とした利水計画よりはソフトも含めた水資源管理が重要だと思っています。その中で、我が国の譲り合いの精神からの渇水調整や、一部地域では回復傾向にある地下水のワイズユースが重要かと思っています。
3.渇水調整は確か河川法の52条か53条で法的根拠があったかと思いますが、地下水には網がかかっていないことを気にしています。
4.過去から議論があるところかと思いますが、取水量‐減水量‐排水量の利用の実態ベースが不明で、需要量と供給可能量の議論だけでよいかも、水資源がひっ迫した場合は気になります。もちろん権利関係も。
5.望ましくはないですが人口減少社会の中で、感度分析的ですが、需要量の減少が気候変動の影響をどの程度緩和するかの相場観の把握は技術者としては重要と思っています。
と…すみません。必ずしもお答えになっていないとは理解しています。これでも、浅学の恥を晒すのを承知の上で、思い切って書いてみました。これらは組織を代表してのコメントではありません。
今回、多くの先生方から応援を頂きました。コメントありがとうございます。微力ですが、ハレーションを恐れず頑張りたいと思っています。また、思いつけば追加します。ともかくも、学会お疲れ様でした。
水源地環境センター・木村と申します。非常に貴重なご発表ありがとうございます。今後の水利用に対して非常に示唆に富む結論・考察と感じました。
利水リスクの増大は、今回ご発表の「量の問題」として顕在化する可能性を高めることを指しますが、併せて「質の問題」にも繋がる重大な話題と思います。発表の最後でも「渇水時における河川生態や水質への影響等」とご説明がありましたが、良悪どちらに振れるかが読めない部分もある中で、今後、①どのような検証が必要か?②問題発生が予想された場合の対策として我々はどんなことを考え準備すべきか?についてお考えがあればご教示頂けますと幸いです。
ご質問ありがとうございます。木村様からの質問に回答させて頂きます。相当、広範な質問なので、その一部にしか回答していないことを前もってお詫び申し上げます。「①どのような検証が必要か?」ですが、人口減少に伴う需要量・利用量減少の可能性がある中で、確定的には言えなくとも、気候変動の影響が緩和される相場観の把握は大切ではないかと思っています。「②問題発生が予想された場合の対策として我々はどんなことを考え準備すべきか?」ですが、一見、適応策が存在しえないような対象でも、影響評価を進めることが大切だと思います。CO2削減の便益評価の意味合いもあるからです。また、今後の水の利用のあり方などは社会全体で考える問題であり、議論の深化・充実に向けて客観性の高いエビデンスの蓄積が重要だと思っています。本研究もこの一環に資する事を期待して研究致しました。西村@国総研
パシフィックコンサルタンツ上原と申します。ご発表、ありがとうございました。今回のご研究では、北海道を除きますが、全国の一級水系で、同じ考え方、同じ方法にて予測されたことで、気候変動による河川流量の変化の傾向を、横並びで比較されたことによって、おおよそ間違いではないであろう変化、影響を定量的に示されたとともに、その変化が大変看過できないことに強く衝撃を受けました。
このご研究による成果は、今後、利水・低水管理を考えていくにあたって、さらに発展させていくことが不可欠ではないかと感じました。
ご質問ですが、今回、1/10渇水流量の生起頻度を指標として変化傾向を整理されましたが、各水系での問題として落とし込んでいくにあたって、別の指標も考えられると思います。お考えをお持ちでしたら、ご教授ください。
また、ご研究ではタンクモデルを用いられましたが、その膨大な構築・検証作業の中で得られたノウハウや課題から、今後このような予測、検討をするために、より適切と考えるモデルについてのお考えがありましたら、ご教授ください。
西村です。皆様方からの質問ありがとうございます。改めて御礼申し上げます。上原様もありがとうございます。早速、回答・コメントさせてください。
「今後、利水・低水管理を考えていくにあたって、さらに発展させていくことが不可欠ではないかと感じました。」は心から同感です。今回、Catchyな指標を計算したに過ぎないことは否ません…。私個人としても地に足を付けて様々な調査・研究を続けている必要を感じています。
「別の指標も考えられると思います。お考えをお持ちでしたら、ご教授ください。」とのことですが、現象を理解するというアプローチと、現状の河川管理にどういう影響があるのかというアプローチと双方を考えています。後者でいうと、出水期、非出水期がどうなるのか気になります。夏季制限水位、河川工事の施工時期に影響があるからです。前者でいうと渇水の激甚性・広域性に関するアプローチが気になります。もし、色々とお考えがあれば寧ろ教えて下さると嬉しいです。
「より適切と考えるモデルについてのお考えがありましたら、ご教授ください。」には答えられる能力・経験は正直ありません。今回、このような計算自体に新規性を求め、個々の手法は実績のある手法ということでタンクを利用しました。今回はラフな計算が大前提ですが、今後、センシティブな問題に挑む際は、モデルにより信頼度がにも求められると思いますが、まだ、考えはありません。是非、今後とも学会等の場で議論させて頂ければと思います。
水源地環境センターの小野と申します。大変貴重な発表をありがとうございました。他のご質問者様と同様に、この計算結果に大きな衝撃を受けました。本研究は、気候変動の影響下における利水計画見直しの重要性の証左となるものと思います。本発表を契機に「気候変動による水資源管理への影響」に関する政策・研究が一層深化・加速化するよう、今後の発展を期待しております。
本発表に関して、基本的な質問で恐縮ですが、以下2点についてご教授頂けると幸いです。①気候変動により降水量が増加するにも関わらず渇水流量の発生頻度が増加するというのは、出水時におけるダムからの無効放流の増加も要因の一つと考えてよろしいでしょうか? ②2℃上昇と比較して4℃上昇のケースでは計算結果に地域的な偏りが見て取れるように感じました。今後の研究において、地域特性を踏まえた整理(例えば、クリーガー曲線による地域係数)を行うことは考えておりますでしょうか?
西村@国総研です。先ずは、「①気候変動により降水量が増加するにも関わらず」ですが、これは豪雨イベントの頻発化もしくは激甚化の意味かと思います。R5に報告させて頂いた(https://www.jstage.jst.go.jp/article/river/29/0/29_551/_article/-char/ja)では、少雨側の非超過確率1/10の年流域平均降水量で整理したところ、少雨傾向が広範に確認されています。
「長期」である年間累積降水量で見ると少雨傾向ながら、その中で「短期」である豪雨イベントは頻発・激甚傾向と思いましたが、確かに、これをダイレクトに示すエビデンスを用意出来ていないことに気がつきました。ご示唆ありがとうございます。
「出水時におけるダムからの無効放流の増加も要因の一つと考えてよろしいでしょうか? 」については、そもそも、未だ横断的な整理は出来ていません。手元のデータを見た感じでは、積雪寒冷地域に限定してコメントすると、融雪期は減り、夏場は増える印象を持ちました。
「②2℃上昇と比較して4℃上昇のケースでは計算結果に地域的な偏りが見て取れるように感じました。」地域的な偏りについては、我が国が気候区分に分類されるような多様性を踏まえ、何らかの整理は必要かと思っていますが、現在、まだ何も出来ていないのが実情です。
今回、Catchyな数字を計算・公表したに過ぎません。ご質問等を踏まえながら、分析を進めたいと思っています。ご質問ありがとうございました。
皆様、ご質問・コメント本当にありがとうございます。
引き続き、ご質問・コメント頂けたら大変ありがたく思います。
(賞の期間は無関係に…と思っています。)
西村@国総研 拝