動的モード分解を用いた超高速氾濫解析手法の提案” に対して5件のコメントがあります。

  1. 吉村 英人 より:

    岐阜大学の吉村と申します.私もPODやDMDが氾濫解析等でも活用できるのでは?と考えていますが,これらは主成分分析手法の一つにしかすぎないので,これだけでは場の推定や予測(特に主題に挙げられているリアルタイム予測)はできないと思います.例えば,機械学習による推定や支配方程式そのものにPODを施す次元縮約モデルなどとの併用が有効と考えますが,その辺りについて将来的な展望はございますでしょうか.

    1. 小山 直紀 より:

      吉村先生

      ご質問ありがとうございます。

      現状取り組んでいるリアルタイム予測に向けては、p.28に述べていますが、
      DMDと浸水センサー等による実測値とを合わせたリアルタイム浸水予測を構築したいと考えております。
      簡単にではありますが、その方法の道筋は下記になります。
      事前にある河川において(縦断的に)様々な地点において、氾濫計算を実施し、各地点におけるDMDの空間モードΦと時間発展モードexp(Ωt)を求めておきます。
      そして、DMDの式:x(t) = Φ exp (Ωt) bという式にA,B,Cというパラメータを導入し、
      x(t) = AΦ exp (BΩ(t-C))
      とします。A,B,Cのそれぞれの意味は、
      A: 浸水深の調整、B:氾濫の拡大速度の調整、C:氾濫開始時刻を調整
      表しています。
      Aのみをパラメータとして導入した場合は、
      x(t) = AΦ exp (Ωt)b
      と表せますが、このモードの違いに倍率Aを掛けた結果をp.27に示しており、この結果より、モードを40程度使用し、倍率をかけることでシミュレーションではありますが、実際の結果とおおよそ合わせることができることを示しています。
      このことは、Aというパラメータをかけることで、浸水深を調整できることを示しております。また、先述しておりますが、Bは氾濫の拡大速度、Cは氾濫開始時刻を調整できます。

      浸水センサー等のリアルタイムに得られるデータに対して、A,B,Cというパラメータを推定(データ同化)し、リアルタイム浸水予測を実施します。
      また、DMDでは高速に計算ができるため、短時間に多くのパラメータを探索できることからも、この手法によるリアルタイム浸水予測の実現性が高いと考えております。

      浸水センサーについては、現状においてはまだまだ取得できるデータは少ないですが、国土交通省によって「ワンコイン浸水センサー実証実験」が進められており、今後、氾濫原に設置される浸水センサの数が増加することが想定されていることからも、本手法の実現性が高いと考えております。

      最後に、吉村先生が述べております通り、機械学習やPODと併用しながら、DMDを活用する方法を私自身も考えておりますので、今後成果がでましたら、論文発表等で報告したいと考えております。

      乱文のため、正確に伝えれていないかもしれませんので、さらにご質問等ありましたら、コメントをいただければと思います。

  2. 吉村 英人 より:

    小山先生,詳しいご説明ありがとうございます.

    完全には理解できていませんが,なんとなく線形応答に近い考え方なのかなと感じました.ただパラメータで単純に調整していいのかは少し疑問があります.例えばパラメータAはそのモードのエネルギーを変化させることになると思いますので,それが物理的に良いのかは把握しておく必要があると思いました.

    また,加えて質問になりますがパラメータA,B,Cというのは解析領域に対して一つが決まるものなのでしょうか.それとも,地点ごとに決まるものなのでしょうか.

    1. 小山 直紀 より:

      吉村先生

      返信が遅くなりまして、申し訳ありません。
      また、ご質問いただき、ありがとうございます。

      パラメータで調整する話ですが、DMDを構築するためには事前に用意した氾濫計算結果から基本となる空間モード及び時間発展モードを構築する必要があります。(考えるうる破堤地点の数だけ、氾濫計算結果を用意する必要があります。)
      ある破堤地点だけを考えた場合に、どの規模の氾濫流量で氾濫結果を作るかが重要になってくると思いますが、現実問題として、実際の氾濫流量を事前に予測およびリアルタイムで把握することは非常に難しいと考えております。
      そこで、パラメータを導入したDMDにおいて浸水センサー等の観測データが得られるたびに、A,B,Cをリアルタイムで補正することを考えております。これは、現実に起こっている氾濫をより表現しうるパラメータを探していることになります。
      これは、事前段階においてDMDの構築に使用する氾濫計算結果の正解がないため、実際の観測データを用いて現実に合わせていくという考えに基づいておりますので、パラメータで調整することに大きな問題はないと思います。

      次にA,B,Cについてですが、ある破堤地点において氾濫予測をする場合を考えますが、A,B,Cは浸水センサーの結果が得られるたびにA,B,Cを逐次的に更新していきます。
      DMDの計算速度が非常に速いため、逐次的にパラメータを探索できることからも、本手法の実現性は高いと考えております。

      蛇足かもしれませんが、以下、現状考えているリアルタイム氾濫計算の流れを書きますと、

      1. 複数の破堤地点の計算結果を作成し、それぞれの地点において、DMDを構築する。(事前準備)
      2. 氾濫が発生した場合、破堤地点を特定し、その破堤地点におけるDMDの氾濫予測結果を第一報として、情報提供する。
      3. 氾濫が広がり、浸水センサー等で観測データが得られた場合、パラメータを導入したDMDで現実の氾濫結果に合うようにA,B,Cを探索する。(第2報の氾濫予測情報の提供)
      4. さらに氾濫が広がり、センサー等でデータが得られるたびに、A,B,Cを逐次決定し、精度を高めていく。(第3,...報の氾濫予測情報の提供)
      となっております。

      以上、ご質問いただいた回答になりますが、他にも何かありましたら、ぜひコメントをいただければと思います。

      どうぞよろしくお願いいたします。

  3. 吉村 英人 より:

    小山先生,ご回答ありがとうございます.

    おそらくA~Cのパラメータは各モードの振幅,周波数,位相ということだと思いますので,問題設定としては観測水深x_i(t),i=1~N(Nは観測地点数)が得られた時に,各モードのパラメータA_j,B_j,C_j,j=1,M(Mはモード数)を求める逆問題ということになると思います.通常この逆問題を解くことは出来ないですが,何らかの事前情報や仮定を用いれば出来るかもしれません.事前情報とはご説明されているような,ある破堤点で一定規模の流量で氾濫した場合の結果を指しますが,流量変化に対して氾濫現象が線形に応答する場合はそれほど難しくはないと思います.ただ,実際には非線形に応答すると思いますので(単純に全モードのA_jやB_jを定数倍,C_jを一律シフトすれば良いというわけではなくなる),その辺りをどう対処するかが課題になるかと思います.

    また,低次モードだけで全モードに相当する再構成を行うには,低次モードと高次モードの関係が必要になると思います(例えば,低次モードが高次モードの重ね合わせで表現できる等).これも単純に全モードのパラメータを定数倍すると,ある地点では観測値と一致するが別の地点では一致しない,といった結果にならないでしょうか.

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