西之谷ダムにおける貯水池地形の変遷と土砂管理手法に関する考察 2024年6月16日 最終更新日時 : 2024年6月17日 中村 亮太 著者 中村亮太/京都大学大学院工学研究科 小林草平/京都大学防災研究所 角哲也/京都大学防災研究所 説明資料 S1-2‗河川技術シンポ‗説明資料-1ダウンロード S1-2‗河川技術シンポ‗ポスターダウンロード
中村様
土木研究所の髙田です。数点質問とコメントさせていただきます。
1)堆砂抑制方策として、水制を置く効果については他の波形でも試されていますでしょうか。開水路流に戻った際の流入量がどれくらい残っているか、によって堆積程度も変わるような気がいたしました。(水位低下速度のみが効く場所でしょうか)
2)堆砂を掘削する際には堆積部を流路状に掘削して流水を引き込むような方法も考えられるでしょうか。
3)堆砂対策の判断として、計画堆砂量との比較に加え、計画年で除した年計画堆砂量の期待値との比較もあるかと思います。その場合、計画より大きく超過していそう(既に6万m3?)ですが、計画より流入分が多いのか、排出分が少ないのか、あるいは計画上も早期に堆砂して動的平衡となるのかが気になりました。
土木研究所 髙田さま
ご質問くださりありがとうございます.
1) 水制を置く効果について,今回は他の洪水波形での検討はしておりません.ご指摘の通り流量の低下がゆっくりであるような波形は検討しておく必要があるかと思います.
西之谷ダムでは洪水吐きが少し左岸側に位置していますので,貯水池右岸側は止水域となります.開水路流に移行する流量は10.66m3/sとあまり大きくないので,あまり洪水波形による違いはないと予想しています.
2)文献[1]を参考に,流路状の掘削も検討しましたが,掘削した流路を埋め戻すように土砂が堆積したため,堆砂量は無対策の場合より多かったです.これは水制による効果があまり見られなかったのと同じ要因かと思います.
流路状の掘削は土砂管理面ではあまり効果はないかもしれませんが,貯水池環境の向上という面ではとても重要かと思います.原稿中のオルソ画像ではよくわかりませんが,貯水池(ダムに近いところ)の両端にはクリークのような流路が形成されています.この流路は湧水によって維持されているかと思いますが(しっかりと調査はしていません),メダカやガムシ類などが本川とは異なる種が生息しています.こういった環境の形成を堆砂掘削と併せて考えていくことが大事かと思います.
3)西之谷ダムでの堆砂速度は計画より早いですが,これは排出分が少ないからであると考えています.2019年7月出水~2021年2月までは流木捕捉スクリーンに竹などが多く捕捉されたことで止水域が常時形成された状態にあり,貯水時に堆積した土砂の多くが開水路流移行時に排砂されなかったものと考えています(定量的な評価はできていませんが).
文献[2]には100年間+1/100確率洪水の河床変動計算の結果が示されています.文献中には各年の堆砂量の値は示されていませんが,図を見ると60年目から変化が河床位の変化が小さくなっているようです.計画上は早期の堆砂が見込まれていたわけではないかと思います.
少し飛躍のある予想ですが,運用初期に土砂を貯めるような工夫があると早く動的平衡に達するのではないかと思いました.西之谷ダムでは流木捕捉スクリーンがそのはたらきを果たしていたのではないでしょうか.西之谷ダムがいま動的平衡にあるのかはさらに検証が必要だと思いますが.
文献[1]:T. Esmaeili, T. Sumi, S. Kantoush, and Y. Kubota, “Free-Flow Sediment Flushing: Insights from Prototype-Scale Studies,” J. Disaster Res., Vol.13 No.4, pp. 677-690, 2018.
文献[2]:西之谷ダム工事誌,pp.1_28
中村様
文献お示しいただき、ご回答ありがとうございます。
1)2)開水路最大流量が小さく、流水の作用を活用して堆砂を下流に流すのは難しいということで理解できました。
3)堆砂が動的平衡かどうかについて、洪水吐き右岸平場への沈降堆積分が減少しがたい?と思い、今後も堆砂は微増するように予想しましたが、引き続き経過を見ながら具体の課題と対策を考えていくものと思います。
髙田様
コメントありがとうございます.少し補足です.
1)2)発表資料8ページに示す0m地点の横断面に示すとおり,左岸側は堆積したものが侵食されている傾向がわかります.現場を歩いた感覚としては,左岸側はすこし軟らかい一方で,右岸側は硬く,圧密が進んでいるかと思います.今回の計算では圧密モデルは入れていませんが,自然の力でフラッシュするのは実際にはもっと難しいのではないかと思いました.
3)について,私も現地調査などを続けていきたいと思います.右岸平場は最近も水につかっていますが,あまり変化はありません.低水路との標高差が2m弱あることが要因かと思います.土砂濃度も流れと同じく左岸側によっているなども考えられます.今回の河床変動計算は数値実験と言い訳していますが,実際をよく説明する精緻なモデルを作るのも今後の課題かと思います.
他の研究課題などについてもまたご相談させてください.
中村様
ご回答ありがとうございました。
補足いただいた点について私も同感です。
こちらこそよろしくお願いいたします。