降雨-土砂・流木流出モデルに基づくハザード予測に関する研究 2023年6月12日 最終更新日時 : 2023年6月12日 原田 大輔 著者 原田大輔/国立研究開発法人土木研究所 江頭進治/国立研究開発法人土木研究所 説明資料 河川シンポ2023_発表_v2ダウンロード
中央大学 後藤です.
山地の崩落から河道への土砂・流木流出,ダムへの流入まで一連の現象を計算されているということで,興味深く勉強させて頂きました.特に,各粒径毎の土砂の挙動について,興味があり,以下の点について,お教え頂ければと思います.
設定された山地の粒度分布は,本文中の図-5のオレンジ線で宜しいでしょうか?
この設定された山地の粒度分布は,ダムへの流入土砂量にどの程度影響するものなのでしょうか?
というのも,今回のご研究では,粒度分布を1つのケースでご検討されているかと思いますが,それは,粒度分布の設定条件の違いは,あまり影響がないので,粒度分布を1ケースとされたのか,それとも今後の課題であるのか,その辺りの感触をお教え頂ければと思います.
どうぞ宜しくお願いたします.
後藤先生
ご質問ありがとうございます。
図-5で、河床の初期条件の粒度分布が緑線で、土石流により横流入する土砂の粒度分布はオレンジ線で与えています。実際には、土石流の粒度分布は場所によって異なりますが、これらを個別に設定することは困難なため、横流入する土砂にはこの粒度分布を一律に与えています。
粒度分布の設定法が解析結果にどの程度影響するか、粒度分布を変えながら感度分析的に調べると、細粒土砂の割合の大小が解析結果にある程度影響しますが、その影響は「最上流の単位河道の勾配設定法」に比べると大きくはありません。その理由として、例えば横流入する土砂の細粒分の割合を大幅に減らせば、下流に輸送される土砂量はそれに応じて減少しますが、もともと河道に堆積していた土砂もある程度下流に輸送されるため、全体の土砂流出量としてみればそこまで小さくなりません。一方で、河道が輸送しうる量・質の土砂以上が横流入したとしても、河道を通じて輸送される土砂量はどこかで頭打ちになります。
したがって、横流入する土砂粒度分布の設定法としては、本研究で行った解析のように、付近の崩壊地により算出される土砂の粒度分布をある程度調べて、これを与えれば、土砂流出量が大きく外れることはない、というのが私の感触です。お答えになっていれば幸いです。
原田様
中央大 後藤です.
詳細にご回答頂き有難うございます.通知を設定し忘れていたようで,返信が遅くなり申し訳ありません.
粒度分布を細かくして多く横流入させても,河道で流し得る量しか流れないし,逆の場合は,その分だけ河道を削って,その分の土砂が流れること,そのご見解,理解しました.
只,そのご見解と今回のご研究との関係で,少し理解できない点がありますので,教えて下さい.
今回,最上流の単位河道の勾配を変化させて,その影響を検討されているということですが,最上流のみ勾配を変化させても,ある程度の距離下流に下ると流砂量はある一定の範囲(河道で流しうる流砂量)に落ち着いてしまうような気がします.どのような機構で,最上流のみ勾配を変化させて,ダムへの流入土砂量がするのでしょうか?お教え頂けると幸いです.
後藤先生
ありがとうございます。
これは、流域の流路網を作成する際に、上流側のどこまでを河道と定義するか、という問題です。
上流側のかなり急勾配な部分(15°など)までを河道として定義すれば、土石流が発達しきらないため、トータルの土砂流出量が若干少なくなります。ただしこの場合、河道を侵食した土砂が流出するため、さほど大きな変化はありません。
一方で、最上流端の勾配を緩く(上流端を3°などに)設定した場合、土石流が斜面に取り残されて「河道」に到達しないと判定されるケースが増えるため、トータルの土砂流出量が少なくなります。これは解析上の課題でもあり、実際には「土石流」と「掃流砂・浮遊砂による輸送」に境界はなく、徐々に遷移しますが、解析上は別々に解いているために、その遷移領域で、どこまでをどちらで解析するかが結果に影響します。
まとめると、流出量を過小評価する可能性はそれなりにある一方、土砂流出量の上限値は河道が輸送しうる量・質の土砂の観点から決まり、寺内ダムへの土砂流出量はこの上限に近い値だといえます。
原田様
ご説明有難うございます.
なるほど,流出解析と同じような課題が,土石流も含めた山地流域の土砂移動の解析を行う際にもあるということですね.
土石流となると,河道の範囲を,河道の勾配で決めることが重要であるということ,大変勉強になりました.
有難うございました.