地形解像度と流況モデルの違いが河川合流部の流れおよび河床変動解析に及ぼす影響

著者

  • 梶川 勇樹/鳥取大学学術研究院工学系部門
  • 加芽田 百合子/アサヒコンサルタント株式会社
  • 茨木 琉汰/神戸大学大学院工学研究科市民工学専攻
  • 和田 孝志/鳥取大学学術研究院工学系部門
  • 黒岩 正光/鳥取大学学術研究院工学系部門
  • 三輪 浩/鳥取大学学術研究院工学系部門

説明資料

地形解像度と流況モデルの違いが河川合流部の流れおよび河床変動解析に及ぼす影響” に対して4件のコメントがあります。

  1. 原田 大輔 より:

    土研ICHARMの原田です。研究内容を興味深く拝見しました。いくつか質問をさせてください。

    ・3Dの計算の際、掃流力はどのように評価されていますか?
    ・上記と関連しますが、4時間の計算で1~2mの河床変動は大きいようにも思われます。実際の河床変動の状況はどうでしょうか。また、2Dは過小評価とありますが、逆に3Dが過大評価ということはないでしょうか。結局は、掃流力とそれに伴う流砂量の評価次第かもしれませんが。
    ・二次元と三次元は、解析の目的に応じて使い分けるものと理解していますが、今回の対象合流部の解析の目的について、よろしければ教えてください。

    (たくさん質問してしまいましたので、お手すきの際にご回答いただければ幸いです。)

    1. 梶川 勇樹 より:

      原田先生

      ご質問ありがとうございます。鳥取大学の梶川です。

      1)掃流力の計算
       3Dでの掃流力の計算では、摩擦速度を対数則から求めております。対数則における粗度高は、粗度係数とマニング・ストリクラー式より求めております。ちなみに、2DHの方では通常のマニング式から摩擦速度→掃流力を計算しています。どちらも一般的な手法です。今回は地形解像度と流況モデルの違いに焦点を当てましたので、抵抗則については非平衡性を考慮するなどはせず、一般的なものを使用しました。ちなみに、「別に非平衡性を考慮してもいいでしょ」とのご意見も頂いており、確かになぁと思っているところです。
      2)実際の河床変動の状況など
       実際の河床変動ですが、大変申し訳ございませんが実は私も詳しくは分かっておりません。ただ、次のご質問の「なぜこの合流部を対象にした?」に繋がる話ですが、この合流部では出水後にかなり土砂が堆積することが分かっております。毎年、この合流部では維持掘削が実施されており、この河川を管理されている事務所様のお話では、例年の出水で数十cm程度は簡単に堆積してしまうとのことでした。図を見ると、3Dでは合流部澪筋内での堆積が再現できているのでは?と思っておりますが、実測データがないためにその検証もできておりません。ですので、今年度以降はまずもって現地データの取得が主な課題となっております。ご質問にきちんとお答えできずで申し訳ございません。
       ちなみに、この合流部において、流量2,000m3/s以上が4時間程度継続することは数年に1回程度ありますが、3,000m3/s以上が4時間継続は経験が殆どないものと思われます。ですので、3,000m3/sでの変動量が1~2mも、もしかするとあり得るかもと考えております。
      3)今回の対象合流部の解析目的
       上記2)に通じる内容ですが、この合流部では出水後の土砂堆積が問題となっております。土砂堆積により、鮎の産卵床の消失や、特に、合流後左岸側での浸水被害が懸念されております。そのため、例年維持掘削が実施されていますが、河川管理者側としては何とかしてこの土砂堆積を制御できたらと考えられています。しかしながら、そもそもどの辺りでの堆積が激しいのか?どこからの土砂?というのも明確ではない状況でした。また、合流部ということで詳細な地形データもない状況でした。ですが、2019年に3次元のALBデータを取得され、合流部での詳細な解析ができるのでは?と思った次第です。その際、合流部なので3次元じゃないとダメかもしれないけれど、実河川だから2次元でもいけるかな?との単純な考えから、まずは比較してみようとした結果が今回の報告になっております。お答えになっていますでしょうか…?

      以上になります。また何かございましたら、よろしくお願いいたします。

  2. 原田 大輔 より:

    梶川先生

    ご回答ありがとうございました。

    1)の質問に関しては、水面から底面までに対数則を当てはめるか、または底面付近のどのあたりに対数則を適用するかによって掃流力の評価が異なると思いましたので、質問させていただきました。

    2), 3)について、流況や河床変動の実態が分かっているところを対象にしなければ、モデルの良し悪しを議論できないのでは? と思い、お尋ねした次第です。
    ご回答から推察しますと、たしかに現地データの取得が課題であると理解できました。資料のp.13などを拝見しますと、計算結果は領域全体として河床低下傾向のように見られます。河床変動の評価には、2D,3Dといったことよりもむしろ、上流端の境界条件や、混合粒径での計算といったことが重要ではないかと思いました。

  3. 梶川 勇樹 より:

    原田先生

    お世話になっております。梶川です。ご返信頂きありがとうございます。

    1)につきまして、対数則を適用した範囲ですが、底面近傍メッシュのみです。鉛直方向メッシュサイズは0.25mで固定しておりまして、流速評価点を格子中央に定義しておりますので、具体的に対数則を適用した範囲は底面から上方0.125mまでとなります。それより上方は運動方程式を解いています。「対数則に従わない流速分布となる場で、せん断力の評価は対数則でいいの?」との疑問も出てしまいますが、今回は従来から用いられている手法を適用した次第です。

    2),3)につきましてはご指摘の通りです。モデルの良し悪しを見るのであれば、やはりきちんと観測データが得られている場所でないとダメだと思います。ただ、流れ場のみになりますが、2DHおよび3Dともにきちんと観測データの得られている他河川(岡山県の旭川)への適用から妥当性も検証しておりまして、流れについては(粗度が適切な値であれば)概ね現場を再現できているのではと考えております。河床変動については本当にご指摘の通りで、現場の観測データがまずもって必要ですし、境界条件(上流もそうですが底面も)や混合粒径での検討も今後必要になってくると感じております。

コメントは受け付けていません。