深層学習を用いたリアルタイム河川水位予測システムの開発と山口県全域への適用 2023年6月12日 最終更新日時 : 2023年6月12日 福丸 大智 著者 福丸大智/山口大学大学院 創成科学研究科 赤松良久/山口大学大学院教授 創成科学研究科 新谷哲也/東京都立大学准教授 都市基盤環境学科 説明資料 河川技術2023_福丸ver1-1
著者の皆様へ:研究成果を興味深く拝見させて頂きました。数時間先までの高精度な水位予測モデルの構築に、成功されているように見受けられます(素晴らしいと思います)。本モデルのエンジン(データ駆動部)として、LSTMを用いていますが、複数の文献を見る限り、比較的長いリードタイムでは、高精度の予測を実現するのは難しいという印象を持っています。本研究の場合も、何故6時間先、12時間先まで延長して予測精度を検証しないのか?という単純な質問を受けるような気がします。今後の展望として、LSTMを用いた場合に、長期的なリードタイムを実現するために、何か良いアイデアなどありますでしょうか?
木村様:ご質問いただき,ありがとうございます.ご指摘のように,本研究のような現時刻までに観測されたデータのみを入力に与えるモデルでは,入力データと出力データの関係性を学習することがより難しくなり,比較的長いリードタイムにおける高精度な予測が難しくなると考えております.一方で,本研究で示したシステムとはやや条件が異なりますが,同様のLSTMで将来時系列の雨量を入力層に反映することにより,6時間予測の精度が向上することを確認しています(文献1).ただし,この検討では実測雨量を予測雨量と見立てた疑似の予測雨量を用いておりますため,今後実際の予測雨量を援用することによるモデルの精度検討が必要でありますが,6時間予測の精度向上の可能性はあると考えております.貴重なご質問いただき,ありがとうございました.
文献1:福丸大智,赤松良久,新谷哲也:深層学習を用いた6時間先の河川水位予測実現に向けた基礎的検討,自然災害研究協議会 中国地区部会 研究論文集,第8号,pp.17-20,2022.
福丸様:ご返答ありがとうございます。LSTM単独では、リードタイムが長い場合に高精度を求めるのは難しいのかも知れませんね。まずは、ご提供して頂いた文献を参考にさせて頂きます。ありがとうございました。
いであ(株)の高橋と申します。
本質的な質問ではないのですが、観測データに欠測があった場合の処理はどうしておられますか?
数年前に機械学習を活用した水位予測システムを検討したことがあり、当時非常に悩んだ点でしたので質問させていただきました。
高橋様:欠損データの処理に関しまして,年全体を通した未観測や,水位が大きく変動し,補間により学習に大きな影響を与えると考えられる豪雨時の大幅な欠測がない限り,水位は線形補間を施し,雨量は周囲の雨量観測所の値から逆距離荷重法で補間しております.貴重なご質問いただき,ありがとうございます.
福丸様
ご返信ありがとうございます。
ご回答は学習時のデータの補間のことと推察します。
システム運用時はいかがでしょうか。
雨量はご回答の通り欠測処理することが可能と思われます。
水位は補間しようとすると外挿になってしまいませんか?1時点の欠測であれば問題なさそうですが、数時点欠測が続くと精度に問題が出てきそうです。
高橋様:ご質問いただきありがとうございます.おっしゃるとおり,学習時の説明をしておりました.予測に関しまして,本研究で対象とした期間(2022/9/18~21)に関しては,線形補間が不可能になるような大幅な欠損が存在しないことを確認しております.ただし,今後の災害時に稼働する場合には,ご指摘のようなことが課題になってきますので,例えば雨量のみから水位を予測するモデルを別途構築したうえで,水位が観測できなかった時系列には,このモデルに切り替えるなどして工夫すること等を考えております.貴重なコメントありがとうございました.