大規模水害時における洪水到達時間によるゾーニングを導入した新たな避難方策の提案

著者

  • 國崎皓/元東京大学
  • 南出将志/東京大学大学院助教 工学系研究科
  • 池内幸司/(一財)河川情報センター 河川情報研究所長

説明資料

大規模水害時における洪水到達時間によるゾーニングを導入した新たな避難方策の提案” に対して3件のコメントがあります。

  1. 内田 龍彦 より:

    厳しい条件を想定し,人的被害を小さくしようとする重要なご研究と思います.今後の課題にも書かれているところですが以下の点について現在のお考えなどをご説明いただけないでしょうか?
    1)大規模災害の想定ということで,課題に書かれているようにより広域の検討も必要となると思います.広域の避難を考える場合は詳細検討とは異なる課題があるのでしょうか?例えば,時間スケールや小氾濫域の相互作用などはどのように扱うのか興味があります(マルチスケールの流れの数値解析と同じようなイメージでとらえています)
    2)様々なシナリオ想定ということですが,洪水到達時間ごとのゾーニングは事前にどの程度のパターンを想定するのでしょうか?例えば行政機関のタイムラインへの組みこみ方や最終的に避難する住民をどのように誘導するのかについてお考えがあれば教えてください.

    1. 池内 幸司 より:

      貴重なコメントをいただきありがとうございます。筆頭著者の國崎君が業務で多忙なため、共著者の池内が代理で回答いたします。
      1)について、
      本論文で取り扱っている避難は江東デルタ地帯全域の氾濫を想定した場合の広域避難の方策を取り扱っています。しかし、より広域の検討、すなわち江東デルタ地帯だけでなく例えば岩淵あたりでほぼ同時に決壊した場合には、隅田川の右岸側も浸水することが想定されますので、隅田川の橋を渡った後の避難方策も検討する必要があります。江東デルタと岩淵付近の決壊時間の関係によって避難方策が変わってきますので、さまざまな決壊時間や決壊場所の組み合わせの場合を想定した避難方策を検討する必要があります。なお、江東デルタの堤防の決壊と岩淵付近の堤防の決壊がほぼ同時刻の場合には、岩淵付近からの氾濫水が江東デルタに到達する前に非浸水区域まで避難できることは概略検討で確認しております。
      2)について
      まず、今回の検討で用いた洪水到達時間は江東デルタ地帯の堤防が決壊する場合を想定したものであり、浸水ナビの洪水最短浸水開始時間を使用しています。この浸水開始時間は、浸水ナビで対象となっている全破堤点を想定し、指定した地点における各破堤点別の浸水予測計算結果の浸水開始時間のうちの最短値を示したものです。したがって今回の検討では、江東デルタ単独の氾濫について最悪のケースを想定した場合の避難方策を提案しています。
      江東デルタ地帯の堤防と江東デルタ地帯以外、例えば岩淵付近で決壊するケースなどについても今後検討する必要があると考えていますが、その際には、まずは決壊の時間差が最悪のケースを想定して、行政のタイムラインに組み込んでいく必要があると考えています。
      避難する住民の誘導方策については、平常時から各地区の住民に対して逃げていく方向と使用する橋を明示して防災訓練やハザードマップなどを通して周知を図るとともに、災害発生時には、各ゾーン(町)ごとの逃げる方向やタイミング、各橋の混雑状況などをスマホのアプリなどを通じて周知することが考えられます。また、今回は片側車道の開放のみを取り扱っていますが、混雑状況が深刻ないくつかの橋については、時間を限って全車線を歩行者に開放することも考えらえれます。

  2. 内田 龍彦 より:

    ご回答ありがとうございました.いずれについても今後の発展を期待しています.特に1)については新しい集合体力学の可能性もあり今後の展開が楽しみです,

コメントは受け付けていません。