堰・頭首工の技術発展経緯考察と今後の技術開発課題整理 2023年6月8日 最終更新日時 : 2023年6月8日 諏訪 義雄 諏訪義雄/土木研究所 新保友啓/(執筆当時)土木研究所 著者氏名/所属 説明資料 230607 プレゼン資料作成用 堰と頭首工 ver2
堰・頭首工に関する著者らの調査,研究成果を丁寧に発表資料にまとめていただきありがとうございます.幅広い調査を踏まえた71ページ以降の考察は今後の堰・頭首工に求められる技術を検討する上で重要な知恵が多く含まれていると思います.その71ページにおいて「洪水応答知見の蓄積も進んだ.その知見を技術開発に生かしていくことも重要.」とありますが,河川線形,周囲構造物との相互作用についてはどの程度分かっているのでしょうか?すなわち,構造物設計に関わる局所的三次元的な応答(62以降,77以降)に加え,中・長期的なより広い範囲の応答が重要と思われますが,これは流砂の連続性だけでよいのでしょうか?一次元的な応答特性の検討はよく見ますが,二次元,三次元的な応答範囲は流れと流砂の相互作用から構造物周囲に留まらないと考えています.今後の堰の改築,撤去などを進めるうえで,その応答について適切に予測することは重要と思いますがこの点について著者らの考えを教えていただけると幸いです.
昨日はOPSでのご発表ありがとうございました。
堰だけでなく、技術変遷について普段意識が向いておらず勉強になりました(松木さんのお話にもありましたがこのようなことを踏まえて最新の技術をどう生かすかを考えることが重要と認識しております)。
ディスカッションの最後の議論に時間がなく参加出来なかったので、ここで回答させて頂きます。
堰の多機能化・効率的な減勢を考える上で三次元的な流体混合の効果等について数値シミュレーションから検討出来るかということだったかと思います。
海外では三次元解析でそのような検討をされているのを見たことがございますし、私も実河川の堰の段階施工について準三次元解析をベースに検討を行っております。そこでは抗力係数等は使用せずに川幅数百mの河川について構造物周辺では最小で50cm程度の計算格子サイズを用いて減勢工から受ける力、跳水による流体混合によるエネルギー減勢を含む三次元流れの解析を河道区間(約10km)を含めて行い(計算時間1週間程度)。段階施工の手順により下流河道の流況がどのように変化するか等について検討を行っています。例えば減勢工周辺の圧力分布、気泡混入の影響であったり、乱れ構造の詳細等については不十分さは残るものと考えられますが、少なくとも大局的な物理機構は取り入れた検討がで出来るものと考えられます。
個人的には、大型模型実験は相似則の問題はあれど実現象ですから説得力がある一方、労力と費用が膨大となりやり直しがきかないため、自由度の高い議論が難しいように思っています。まずは数値解析により構造物周辺の三次元流れを上下流河道を含めて計算してみて、その結果を見ることでイメージを持ち、堰の構造、減勢工諸元について大胆な案も含めて検討し、ケースを絞り込み、大型模型実験で最終確認・細部設計をする等、両者の利点・限界を理解し上手く組み合わせていくことが今日的な河川構造物の設計として重要と日頃より思っているところでございます。
内田先生質問ありがとうございます.
>河川線形,周囲構造物との相互作用についてはどの程度分かっているのでしょうか?
河川線形との相互作用は、私どもの総説ではカバーできていませんでした.
討議の時間で、
大内先生から曲がっていると死水域になっている場合もあり、オールゲートである必要はないのではないかとの指摘・コメント頂きました.
松木様からは、江戸時代の堰は、線形と澪筋を考えて作っていること、それを松木様の論文やプレゼン資料で紹介されています.
私共の見方としては、以下のようになります.
・大きなスケール(複数のセグメントをまたぐ)の応答の見方として,河床縦断形変化
・次に構造物の安全性・設計を見る,模型実験を行うような,施設を中心とする数㎞スケールでの平面的な流況や水位縦断形(計画高水位を超えないかのチェック)
・必要があればもう少し小さいスケールで、堰下流の洗堀,ゲートが埋塞しない・河道出来ることの確認等
流砂の連続性は,大きなスケールでも応答を見るものと考えています.施設設計ではどうしても施設中心になるので見逃されがちですので.そこを強調していました.
今後施設の再編を考えていく場合,ご指摘のとおり、川幅の10倍スケールの2次元・3次元的な流れ・河床変動の検討が重要になると思います.ありがとうございます.
>「二次元,三次元的な応答範囲は流れと流砂の相互作用から構造物周囲に留まらないと考えています」
コメントありがとうございます.
模型実験を見る、現地の測量から解釈することばかりやっていると、このようなご指摘に気付きにくいのだと気づかされました.
このあたりは数値計算で豊富な比較を行っている研究者だからこそ気づく点ではないかと推察しました.
数値計算の見方に慣れ親しめるように努めたいと思います.
竹村先生、補足ありがとうございます.
数値計算と模型実験、現地観測の相乗効果が重要だと再認識させていただきました.
ケースを比較的容易に変更できる,詳細に分解能を挙げて考察できる数値計算のよさを生かすことも重要だと認識しました.
個人的には、数値計算は概略設計で活躍できると考えています.現在の減勢工設計では概略検討時に実績あるものを持ってくる,跳水長計算で上下流方向設計を決めてしまうことから,確認や不具合の調整くらいしか模型実験をかつようできていないと個人的には考えています.3次元的な減勢設計にした場合の定性的有利性有無等は多少精度に課題があっても有力な検討材料と考えます.概略設計での活用も計算技術者の皆様には視野に入れて頂けると模型実験との相互補間が広がると期待します.
今後ともよろしくお願いします.
諏訪