【OS3】総合討議 2023年6月19日 最終更新日時 : 2023年6月22日 シンポジウム事務局 パネリスト:梶川 勇樹,柏田 仁,福岡 捷二,堀江 克也,田端 幸輔,三戸 雅文 司会:戸田 祐嗣 ご意見・ご質問はコメントにてお願いいたします.
三次元流れの解析の重要性は理解しております。皆さんの解析において、これに対応する流砂の課題、境界条件の課題についてどんな見通しのもとに研究しておられるでしょうか。例えば、河床の力学どのように扱っておられますか。
OS3で話題提供させていただいた田端です。貴重なコメントいただきありがとうございます。反応が遅くなってしまい大変恐縮ですが、いただいたコメントに返信します。(個人的見解であることご了承ください)
【流砂の課題への見通し】
流れの解像度を上げることは、土砂を動かす駆動力を評価する上で重要ですが、これに加えて流砂運動、粒度構成・河床高変化を精度良く表現できる必要があると思います。特に粒度分布が広く、土砂移動が活発なセグメント1では、従前のモデル(平衡状態が仮定された汎用的な河床変動解析モデル)では表現できないいくつかの課題があると認識しています。
例:
・表層の凹凸が掃流砂量、浮遊砂巻き上げ量に及ぼす影響(掃流力低減効果、遮蔽率の評価法)
・せん断力に応じた選択的な土砂移動(停止材料と移動材料の混在、あるいは全て移動材となる状態も含む)
・河床を構成する主材料となる中~大粒径粒子の非平衡的な運動(その場の掃流力だけでは表現できない)
・中~大粒径粒子の空隙部分への細粒分の充填/抜け出し
・上のような現象の結果として生じる粒度構成比率、空隙、河床高の変化
たとえば、セグメント1の構造物(護岸、橋梁)の安定性(現況の砂州がどの程度の規模の洪水で移動するか、その際に致命的な局所洗掘は生じないか等)、掘削後河道の持続可能性(周辺構造物の安定性、再堆積・再繁茂の可能性、二極化しないかどうか等)、排砂対策に伴うダム下流の物理・環境変化 等を予測する際には、流れとともに土砂運動についてもより精緻に表現できる手法が適用されるべきで、実用に耐える合理的な手法の積極的開発が必要と思います。
ただし、モデルを開発しても検証がなかなか難しいと思われます。境界条件が明瞭な混合粒径土砂を用いた大型模型実験(あるいは個々の粒子挙動を追跡できる精緻な数値実験)により良質なデータを取得し、モデルの検証に活用することが、社会実装する上での一つの方向性となり得るのではないかと思っています。
【河床の力学の取り扱い】
私個人としては、現在は従前のモデルを適用して研究している状況にあります。ただし、停止材と移動材が混在する際の堆積過程での粒度分布変化については、現象をなるべく表現できるように(移動材の堆積時に停止材が浮かび上がってこないように)平野モデルを工夫するための手法等は検討しております。