【OS2】パネルディスカッション 2023年6月19日 最終更新日時 : 2023年6月19日 シンポジウム事務局 パネリスト:西尾 正博,井上 清敬,萱場 祐一,瀧 健太郎,石川 忠晴,原田 守啓 司会:呉 修一 ご意見・ご質問はコメントにてお願いいたします.
住民目線で浸水リスクを評価する際に、外水と内水を一体で評価することは重要だと思います。一方、湛水型内水の検討を行う際には、河川水位と堤内地側の降雨波形の関係で浸水状況変わるので、非常に多くの降雨の時空間分布のパターンにおける検討が必要となり非常に多くの労力がかかると思いますが、具体的にどの様な手法で検討を進めていこうとされているのかお教えいただければ幸いです。
OS2全体討議で論点として提示しました論点スライドから文字のみコピペでお示しします.
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論点①社会技術としての流域治水へ
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社会技術=社会課題の解決のための技術「治水」が社会課題であるととらえるか,社会課題(環境課題含む)の解決も包含した流域治水の実現を目指すかによって,立場は大きく異なる.
・OS1で紹介していただいた島谷先生らが球磨川流域で推進する緑の流域治水は後者
・江の川特定都市河川指定(西尾様)
“貯留”メニューへの地元自治体・地域合意
集水域の一部でもあり,氾濫域の大部分を占める農地(営農家)の合意形成
内水対策,地先の安全度の向上
・流域治水型の治水計画の提案(井上様)
内水も含めた「堤内地の浸水」側から考えるのが流域治水型の治水計画 という提案
地先に対する浸水と降雨の関係性から,治水事業の整備効果を可視化
流域治水計画の効果の見える化・リスクコミュニケーション
・その他の投稿論文から
中長期的な“まちづくり” に資するリスク情報の提供 ⇒都市計画,立地適正化計画
避難(危機管理的対応)に資するリスク情報の提供 ⇒地域・地区防災計画,マイタイムライン
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論点②水系を俯瞰した河川技術へ(本川・支川/河道・氾濫原/超過洪水への備え)
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近年の議論を通じて,流域治水を支える河川技術が進展.
1)定常流を対象 ⇔ 降雨ー(浸透・貯留)ー流出現象,非定常・不定流現象
2)河川区間ごとの河川技術 ⇔ 本川・支川の水系ネットワークとしての河川技術
⇒これらは流域治水のための現象理解のための大前提として理解されてきている
3)河道内のみを対象領域 ⇔ 河道に隣接した氾濫原も含めた河川技術
⇒河道内外の水のやりとりの研究は進んでいるが社会技術としては課題が多い
4)計画外力までの安全性の確保(防災) ⇔ 超過洪水,氾濫後まで視野に入れた減災
⇒超過洪水を語ることはもはやタブーではなくなった
これらに関係する議論して,
中小河川の河道貯留を増やす⇒下流河川・合流先本川に寄与(タイミング効果は?)
環境とのシナジー 治水と環境を両立する河川技術=多自然川づくり (萱場先生)
OS1:流域水収支分布など,見える化技術(福岡先生)
OS1:上下流,本川支川の治水安全度バランスの問題(島谷先生)
水理現象のみならず被害補償,地元の納得まで含めた枠組み 社会技術・行政施策
霞堤の保全を不利益問題のつけまわしにしない社会的な道具はある(瀧先生)
河道に面した氾濫原=河川がつくった地形(河成地形)微地形に着目したリスクコントロール ⇒ 一歩すすめて氾濫原の微地形から河道計画へのフィードバック (石川先生)
OS1:球磨川水害時の氾濫現象(大本先生,福岡先生)
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OS2閉会後に,色々なご意見をいただいています.よろしければ今後の議論につなげるため,コメント機能でもいろいろとご意見いただけますと幸いです.
原田さん
OS2の後のコメントを紹介してください。
流域治水は流域を対象に水のマネジメントを実施することに踏み込んだために、流域全体の水の自然のシステムと社会のシステムを理解することが必要になりました。河川技術者は視野を広げ、森林の遮断蒸発が大きいこと、平地の水管理が利水管理と洪水管理が一体に行われたこと、氾濫を積極的に利用した水管理が行われた場所があること、河川改修は下流の洪水量を増やす行為であることを十分に認識することが必要であると考えています。若い河川技術者は水管理の歴史を古代から現代まで通史的に学ぶことをお勧めします。
OS1・2終了後に個人的に受け取ったご意見については別コメントに記入させていただきました.
まだディスカッション期間がありますことと,閉会後のアンケートの方にもOS1・2へのご意見があるかもしれません.
OS1・2の後に個人的にいただいたご意見・コメント等についていくつか要点をお示しします.
(私の頭を通してバイアスがかかっているのでうまく要約できているか自信がありませんし,直接お話した方やメッセージいただいた方からのごく少数のサンプルに基づくものです.)
やや批判的なご意見としまして…
・「恵みとリスクのコミュニケーション」は結構だが,ふわっとした議論にならないよう,定量的な信頼に足る工学的な議論に拠って立つことを忘れてはならない.
・不確実性の高い流域治水メニュー(貯留・浸透)で地域に期待をもたせるのではなく,確実な効果が期待でき,社会に対して責任を持てる河川技術であるべきだ.技術に対する信用を失うことはあってはならない.
・超過洪水,氾濫のさせ方,といった議論をやるなとは言わないが,河道内でやるべきことがいくらでもあるではないか.そちらにより注力すべきだ.
・河川の氾濫について,氾濫を許容する,氾濫原を流下させる,といった表現は,住民や農家,事業者にとって受け入れがたい議論であり,表現に注意するべきである.
・技術者として「最悪の状況」を想定し,それをいかに減災できるかという発想が必要だ.球磨川の事象でさえ最悪とはいえない.L1.2対応の流域治水ではなく,L2の際に起こりうる最悪の事象の想定とそれに対する対策が必要だ.
個別具体にどの話題提供者・オーガナイザーのどの言論に対するご批判,というよりも,流域治水のあり方に対するご意見と受け止め,個々のご意見に対する個人的見解は述べません.
批判的なご意見の一方で,「治水が社会課題化しているのであるから社会を挙げて治水に取り組むべきだという考え方と,地域の様々な社会課題(環境課題含む)の解決の中に流域治水の組み込むことを目指す考え方の2通りの考え方がありそうだ」という指摘自体には,好意的な意見を主に非河川技術者の方々,地域で活動なさっている技術者・研究者からいただいています.
また,リスクの提示だけでなく,「恵みとリスクの両面に対するコミュニケーションが必要」との指摘に対しても同様です.
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また,コメントによるディスカッションは一週間ほどオープンですのでご意見ある方は是非ご記入いただけますようよろしくお願いします.
閉会後のアンケートから,OS1・2についてはご意見いただけるかもしれません.