田端 幸輔1,福島 雅紀1,服部 敦2
1.国土交通省 国土技術政策総合研究所 河川研究部河川研究室,2.国立研究開発法人土木研究所 流域水環境研究グループ
田端さん、研究内容を興味深く拝見しました。
今回の研究では、物理過程を介さずに大粒径の粒子を下層に落とすので、そのことによる問題点もいくつかあるのではないでしょうか。 改良モデルにおいて、例えばp.8の計算結果左下図で、20km-8kmの区間で0.075mm-0.25mmの粒径階粒子がほぼ100%を占める状況というのは、実現象を考えれば非現実的ではないでしょうか(粗い粒子を下層に落としすぎている?)(ちなみに「細砂のみを供給した」というのは、0.075mm-0.25mmの粒径階のみを供給したのですか?)。なお、「改良モデル」が他の手法としてどの程度良いかを評価するのは容易ではなさそうです(p.6の実験値とはかなり離れているようで)。
グリッド型の河床変動計算は、グリッド内の状況を平均化して評価する手法なので、その平面的な平均化と交換層内の鉛直粒度分布を平均化して扱う平野の手法は相性が良いようにも思えます。これは個人的な考えですが、粒度分布を評価する際に交換層にactiveでない材料があること(=浮き上がりと書かれている部分)は問題ではなく、むしろ「計算終了時の表層材料粒度分布」を示す際に、大粒径の粒子が表層にあることが「気まずい」のではないでしょうか。実際、表層に0.075mm-0.25mmの土砂が50%もあれば、現地に行けばほぼ細砂に覆われているように見えるはずです。これは計算終了時の河床材料粒度分布としてどこを見るかの問題であり、交換層+浮遊砂の粒度分布を見るか、または細砂が50%もあれば「被覆された」と判定する、といったことで解決できるかもしれません。
テキストだけで、伝わらない部分や、全然違うお考えかもしれず、何となくネガティブなコメントに受け取られたら申し訳ありません。またゆっくりと議論させてください。
興味深い研究発表、ありがとうございます。 研究の趣旨とやや外れる質問で恐縮ですが、 論文を拝見すると、解析では粗度を一定としているようにお見受けしました。 今回対象とされた実験ですと、細粒分の堆積の程度で粗度が変わり、水位や掃流力にも割と影響するのではと思ったのですが、いかがでしょうか。 今度、お時間のあるときにでも、お話を伺えると幸いです。
原田様 貴重なご意見ありがとうございます。
p.8の計算結果は、仮想的なものであり、実験や現地計測で実際に確かめられているわけではないことを前提に回答いたします。この計算では、上流端の河床が細砂(0.075-0.25mm)のみで形成されているとした場合の平衡流砂量を供給しています。よって、計算上は、下流区間の交換層が細砂100%となった時点で動的平衡状態となり、河床上昇が停止することになります。(通常の河川でこのような状況は非現実的かもしれませんが、土砂還元対策を検討する上で、このような水理条件、土砂供給条件を想定する場面もあるのではと考えています。) つまり、「細砂100%に達しない」ことは平衡状態に達していないことを意味します。平野モデルでは、activeでない大粒径粒子の浮き上がりが生じるため、平衡に達するまで時間を要する(結果として、堆積量が過大に評価する)と考えています。本提案手法はこの問題にアプローチしたものです。 また、ご指摘の通り、模型実験や現場への適用等を通じて、本提案手法の検証が必要と考えています。
また、後半部分のコメントに対してですが、 当方は、浮き上がり問題が交換層モデルの本質的課題の一つであり、このような「気まずい」結果を提示してしまう問題を改善すべきと考えております。 例えばご指摘にある「細砂が50%もあれば「被覆された」と判定する」といった見方もあるかもしれませんが、具体の閾値を物理的にどう決めればよいのかは議論があるところかと思いました。(表面から見えている部分の粒度分布を適切に評価するには、岩見モデルのように露出材と充填材に分離して土砂収支を見積もるか、あるいは各粒子を個別に追跡する等が必要。)
お考えを教えていただき、ありがとうございます。 実験と合えば良いと思いますが、流砂量式の効果なのか、交換層モデルの効果なのか、よく分からないところが難しいですね。個人的には、流砂量式の違いの方が支配的だと思っていますが、またいろいろと教えてください。
今日のご発表も、ありがとうございました。私が申し上げたかったことは、
計算結果には、交換層に加え、流砂量式、粗度、空隙といった要素が影響しているために、交換層を改良してもどう良くなったか確かめようがなく、そのことが交換層の議論が平野モデル以降あまり進展してこなかった理由だとも思っています。この点について突破口が必要ではないでしょうか。何度も失礼いたしました。
太田様 貴重なご意見ありがとうございます。 今回の計算では、粒度分布変化に伴う粗度変化は考慮してません。ご指摘の通り、粒度分布は掃流力に影響してくるはずですが、ここでは交換層内のsemi-activeな交換の有無による粒度分布変化に着目するため、粗度変化は考慮せずに検討を行っております。
混合粒径の計算は,私も粗度の評価とそれぞれの粒径が担う役割(粒径別の掃流力,または流砂が担うものと底面がになうもの)が重要ではないかと思っています.semi-activeとの交換を踏まえても評価は必要だと思いますが,まずは課題としておいたのか,考慮をしないでよいとされたのか,もし,後者だったらその判断をされた理由を教えていただけると幸いです.
溝口先生 ご指摘ありがとうございます。本研究では交換層内の粒度変化に着目したものであり、ご指摘の点についてはまずは課題としたというところです。河床表層の構造が変化することが流れの抵抗、掃流力に及ぼす影響は重要になる(特に、今想定しているような礫床が砂化する状況においては)ので、考慮する方向で考えおります。
ご発表ありがとうございます.「交換層内の粒度変化に着目」とのことですが,それを解く5頁の式で,a,λを解く方程式が無いのが問題と思っております.粒度分布の時間変化式のそのものの妥当性については検討されているのでしょうか?
a,λは一定としています。実際は、両者が変化すると思われます(発表中、東建の渡邊様からも、空隙内を充填する機構を考えなくて良いかという質問をいただきました)。activeでない材料の質量保存は満たされていると考えていますが、a,λも含めた表層の粒度分布の時間変化については本質的な部分と思いますので、今後検討していきたいと思います。
回答ありがとうございました.今後の展開を期待しています.
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田端さん、研究内容を興味深く拝見しました。
今回の研究では、物理過程を介さずに大粒径の粒子を下層に落とすので、そのことによる問題点もいくつかあるのではないでしょうか。
改良モデルにおいて、例えばp.8の計算結果左下図で、20km-8kmの区間で0.075mm-0.25mmの粒径階粒子がほぼ100%を占める状況というのは、実現象を考えれば非現実的ではないでしょうか(粗い粒子を下層に落としすぎている?)(ちなみに「細砂のみを供給した」というのは、0.075mm-0.25mmの粒径階のみを供給したのですか?)。なお、「改良モデル」が他の手法としてどの程度良いかを評価するのは容易ではなさそうです(p.6の実験値とはかなり離れているようで)。
グリッド型の河床変動計算は、グリッド内の状況を平均化して評価する手法なので、その平面的な平均化と交換層内の鉛直粒度分布を平均化して扱う平野の手法は相性が良いようにも思えます。これは個人的な考えですが、粒度分布を評価する際に交換層にactiveでない材料があること(=浮き上がりと書かれている部分)は問題ではなく、むしろ「計算終了時の表層材料粒度分布」を示す際に、大粒径の粒子が表層にあることが「気まずい」のではないでしょうか。実際、表層に0.075mm-0.25mmの土砂が50%もあれば、現地に行けばほぼ細砂に覆われているように見えるはずです。これは計算終了時の河床材料粒度分布としてどこを見るかの問題であり、交換層+浮遊砂の粒度分布を見るか、または細砂が50%もあれば「被覆された」と判定する、といったことで解決できるかもしれません。
テキストだけで、伝わらない部分や、全然違うお考えかもしれず、何となくネガティブなコメントに受け取られたら申し訳ありません。またゆっくりと議論させてください。
興味深い研究発表、ありがとうございます。
研究の趣旨とやや外れる質問で恐縮ですが、
論文を拝見すると、解析では粗度を一定としているようにお見受けしました。
今回対象とされた実験ですと、細粒分の堆積の程度で粗度が変わり、水位や掃流力にも割と影響するのではと思ったのですが、いかがでしょうか。
今度、お時間のあるときにでも、お話を伺えると幸いです。
原田様
貴重なご意見ありがとうございます。
p.8の計算結果は、仮想的なものであり、実験や現地計測で実際に確かめられているわけではないことを前提に回答いたします。この計算では、上流端の河床が細砂(0.075-0.25mm)のみで形成されているとした場合の平衡流砂量を供給しています。よって、計算上は、下流区間の交換層が細砂100%となった時点で動的平衡状態となり、河床上昇が停止することになります。(通常の河川でこのような状況は非現実的かもしれませんが、土砂還元対策を検討する上で、このような水理条件、土砂供給条件を想定する場面もあるのではと考えています。)
つまり、「細砂100%に達しない」ことは平衡状態に達していないことを意味します。平野モデルでは、activeでない大粒径粒子の浮き上がりが生じるため、平衡に達するまで時間を要する(結果として、堆積量が過大に評価する)と考えています。本提案手法はこの問題にアプローチしたものです。
また、ご指摘の通り、模型実験や現場への適用等を通じて、本提案手法の検証が必要と考えています。
また、後半部分のコメントに対してですが、
当方は、浮き上がり問題が交換層モデルの本質的課題の一つであり、このような「気まずい」結果を提示してしまう問題を改善すべきと考えております。
例えばご指摘にある「細砂が50%もあれば「被覆された」と判定する」といった見方もあるかもしれませんが、具体の閾値を物理的にどう決めればよいのかは議論があるところかと思いました。(表面から見えている部分の粒度分布を適切に評価するには、岩見モデルのように露出材と充填材に分離して土砂収支を見積もるか、あるいは各粒子を個別に追跡する等が必要。)
お考えを教えていただき、ありがとうございます。
実験と合えば良いと思いますが、流砂量式の効果なのか、交換層モデルの効果なのか、よく分からないところが難しいですね。個人的には、流砂量式の違いの方が支配的だと思っていますが、またいろいろと教えてください。
今日のご発表も、ありがとうございました。私が申し上げたかったことは、
計算結果には、交換層に加え、流砂量式、粗度、空隙といった要素が影響しているために、交換層を改良してもどう良くなったか確かめようがなく、そのことが交換層の議論が平野モデル以降あまり進展してこなかった理由だとも思っています。この点について突破口が必要ではないでしょうか。何度も失礼いたしました。
太田様
貴重なご意見ありがとうございます。
今回の計算では、粒度分布変化に伴う粗度変化は考慮してません。ご指摘の通り、粒度分布は掃流力に影響してくるはずですが、ここでは交換層内のsemi-activeな交換の有無による粒度分布変化に着目するため、粗度変化は考慮せずに検討を行っております。
混合粒径の計算は,私も粗度の評価とそれぞれの粒径が担う役割(粒径別の掃流力,または流砂が担うものと底面がになうもの)が重要ではないかと思っています.semi-activeとの交換を踏まえても評価は必要だと思いますが,まずは課題としておいたのか,考慮をしないでよいとされたのか,もし,後者だったらその判断をされた理由を教えていただけると幸いです.
溝口先生
ご指摘ありがとうございます。本研究では交換層内の粒度変化に着目したものであり、ご指摘の点についてはまずは課題としたというところです。河床表層の構造が変化することが流れの抵抗、掃流力に及ぼす影響は重要になる(特に、今想定しているような礫床が砂化する状況においては)ので、考慮する方向で考えおります。
ご発表ありがとうございます.「交換層内の粒度変化に着目」とのことですが,それを解く5頁の式で,a,λを解く方程式が無いのが問題と思っております.粒度分布の時間変化式のそのものの妥当性については検討されているのでしょうか?
a,λは一定としています。実際は、両者が変化すると思われます(発表中、東建の渡邊様からも、空隙内を充填する機構を考えなくて良いかという質問をいただきました)。activeでない材料の質量保存は満たされていると考えていますが、a,λも含めた表層の粒度分布の時間変化については本質的な部分と思いますので、今後検討していきたいと思います。
回答ありがとうございました.今後の展開を期待しています.