The symposium about river engineering, 2022

砂河川の砂州堆積評価に着目した平面二次元河床変動解析モデルの条件設定における留意点

著者

新妻 友太1,水田 圭亮1,吉武 央気1,羽田 忍1,菅井 源造1,島田 立季1,相川 隆生2

1.パシフィックコンサルタンツ株式会社,2.国土交通省 中部地方整備局 豊橋河川事務所調査課

説明資料

コメント (6)
  1. 原田 大輔 (土木研究所) より:

    土木研究所の原田と申します。
    ご発表内容を興味深く読ませていただきました。
    少し質問・コメントをさせてください。

    ・解析結果をみると、いずれのケースも地点2,3が同様の堆積傾向を示し、地点1は侵食傾向です。一方、観測では地点1で最も多くの浮遊砂が堆積しているようです。この差を、どう解釈したら良いでしょうか。
    ・上記に関連して、「砂州堆積評価」を考えれば、堆積量のオーダーが実測と合うことは重要ではないでしょうか。その点では、浮遊限界よりもむしろ初期粒度分布の設定や、上流端の粒度分布の設定(=上流端境界から流入する浮遊砂量の設定)が重要かと思いました。(全然違うお考えでしたら教えてください)。解析区間上流端の浮遊砂濃度は平衡条件を与えておられると思いますが、その際粒度分布は時間的に変化するように設定されているのでしょうか。といいますのは、上流端の粒度分布が時間的に変化しなければ、上流端のu*が大きいところ、例えば矢作川の深いところなどから、延々と多量の浮遊砂が供給されるのではないかと思われるからです。そういった点では、出水時、あるいは浮遊限界に近い流量になったとしても、採水ができれば、それと計算の浮遊砂濃度を比較できれば良さそうですね。
    ・交換層厚を0.3mと厚めに設定されているので、なかなか粒度分布が変わりにくいのではないかと思いますが、0.3mに設定された理由があれば教えてください。
    ・最後に書かれている、「砂州内部における固着」とはどのような現象か、教えていただけないでしょうか。

    たくさんご質問してしまい恐縮ですが、お時間のある時に教えていただければ幸いです。

  2. 新妻 友太 より:

    原田様
    パシフィックコンサルタンツの新妻と申します。貴重なご意見を頂き、誠にありがとうございます。
    返信が遅くなり恐縮ですが、回答させていただきます。

    【1つ目のご意見に対して】
    ・まず前提として、観測の堆積厚は0~3cmと非常に小さく、地点間の差の傾向がどこまで信頼できるものなのかという問題があると認識しています。そのため、引き続き調査を継続していき、傾向を確認する必要があると認識しています。
    ・その上で、地点1は植生繁茂域であり、本解析モデルでも代表的なパラメータを用いて考慮はしたものの、その設定方法が観測との差の要因の1つとして有りうると考えています。

    【2つ目のご意見に対して】
    ・堆積量オーダーを合わせることの重要性についての認識およびそのための課題について、ご指摘の通りと考えております。
    ・粒度分布の時間変化は考慮出来ておらず、本計算の設定では、仰るように常に最上端メッシュの初期分布より細粒分が供給され続ける条件になっていたかと思っております。
    ・本来であればq-qs式等により堆積量オーダーを合わせた上で、適切な下限流量を確認した方が収まりが良かったと思っていますが、本研究では簡易に考慮可能な給砂条件をケース間で統一させての相対比較に留まっております。浮遊砂の供給方法については今後の課題とし、引き続き検討を続けていこうと考えております。

    【3つ目のご意見に対して】
    ・今回、本研究で実施した堆積調査結果を表層へ与え、ある程度洗掘された後、堆積層で設定している河床材料調査で得られるやや粗い粒径が現れる状況を狙ったため、厚めに設定しました。
    ・0.3mは、一般の河床材料調査における表層~下層の境界厚さを参考に設定しただけであり、深い根拠はありません。

    【4つ目のご意見に対して】
    ・河床変動量時系列より、堆積だけでなく、洗掘のオーダーもやや過大に感じられたため、現地で掘れにくい状況が解析で考慮出来ていなかった可能性があると考えて記載させていただきました。
    特定の現象を想定したものではないのですが、例えば砂州下層部等での締固めや、植生の根等の影響が有るのではないかと考えております。

    1. 原田 大輔 (土木研究所) より:

      ご回答いただきありがとうございました。
      採水ができれば良いと思いますが、計算の浮遊砂濃度が高すぎるのではないでしょうか。0.1mmくらいの粒径になると、板倉・岸式はかなり濃度が高くなると思いますが、これは、基準面濃度が沈降速度Woに反比例する形式のためです。海外では、0.1mm程度の粒径を扱う場合、van_Rijn(1984)の式を使うのが一般的なようですので、よろしければ試してみてはいかがでしょうか。

      1. 新妻 友太 より:

        原田様
        ご助言いただきありがとうございます。
        上端条件・浮遊砂浮上量式共に、浮遊砂濃度が高くなる条件となっていることについてよく理解できました。大変勉強になりました。
        ぜひ、試してみたいと思います。

  3. 溝口 敦子 より:

    様々な現地と解析でのご検討,興味深く見させていただきました.十分理解できていないと思いますが,少し教えてください.
    今回比較されている一様粒径,混合粒径の解析ですが,比較は選定された点のみで行ったのでしょうか?すでに議論にでているように,混合粒径は初期条件や境界条件の関係で一様粒径での解析以上に様々な調整が必要になるように思います.例えば様々な条件を調整するとしても,各条件での比較は,砂州全体の動きは比較されたのか?全体を比較しても混合粒径のモデルのほうが再現性がよかったのか?を教えてください.また,今回着目された点は植生域内または周辺の点になっており,植生内への堆積が十分表現できるモデルになっているのかという別の問題があるように思います.そのあたりの考え方等も教えてください.

    1. 新妻 友太 より:

      溝口先生
      ご質問頂きありがとうございます。パシフィックコンサルタンツの新妻と申します。
      回答させていただきます。

      ・本研究では、まず一出水期のみを対象としたため砂州の動きが少ないことと、その中で堆積厚が得られたのは調査4地点のみであるため、本地点のみで再現性を評価しております。
      ・今後は、長期解析を行い、砂州全体の動きについても再現性を確認していく必要があると認識しております。
      ・植生のパラメータは、密生度に代表値を一律で用いており、その妥当性についても本研究では検証出来ていない状況です。その最適な設定方法についても今後の検討課題の一つであると認識しております。